2015.03.13
ACADEMIA
日時:2015年3月13日(金)18:30(終了予定時間19:40)
場所:インターメディアテク2階ACADEMIA(レクチャーシアター)
参加費:無料(事前予約不要)
席数:48席(先着順、席に限りがありますので予めご了承ください)
*撮影および録音は禁止とさせていただきます。
*会場でのご飲食(ガムを含む)はご遠慮ください。
【上映作品】
「福岡県」(「日本発見」シリーズより)
1962年/28分13秒/16mmをデジタル化/白黒
岩波映画製作所/制作:高村 武次/監督:藤久 真彦/脚本:吉原 順平/撮影:小泉 清
「久留米かすり」
1959年/16分58秒/16mmをデジタル化/白黒
岩波映画製作所/制作:小口 禎三/監督:土本 典昭/脚本:羽仁 進、犬伏 英之、吉原 順平/撮影:狩谷 篤
「博多人形」
1959年/17分/16mmをデジタル化/白黒
岩波映画製作所/制作:小口 禎三/監督:土本 典昭/脚本:羽仁 進、犬伏 英之、吉原 順平/撮影:狩谷 篤
昭和35年1月、土門拳による戦後フォト・ルポルタージュの名作『筑豊のこどもたち』がパトリア書店から発行されます。モノクロ写真をザラ紙に印刷した安価の写真集は、衰退している九州炭田地帯の寂しい暮らしを率直に伝え、全国の人々がそれに胸を打たれました。厳しい転換期を生きた当時の「日本人の顔」は、映画においても鮮明に描かれています。本上映会では、当時の記録映画をもとに社会状況を振り返りつつ、その中で維持されてきた伝統工芸にも注目します。
【「日本再発見」について】
昭和36年から翌年に亘り、各都道府県を紹介する教育番組「日本発見」シリーズが日本教育テレビで放送されました。岩波映画製作所の制作による本シリーズは、当時の名監督が各都道府県の紹介映画を担当し、社会学的観点から高度成長期の日本を紹介しています。とは言え、このシリーズは、単に「すたれた教材」ではありません。冷静にして詩的なナレーション、当時の映画におけるフレーミングや編集と一部共通する実験が見られるほか、写されている日本の姿が非常に興味深いものとなっています。各地域を特徴づける風土をはじめ、グローバル化以前の「日本人の顔」、そして工業化の最中の「日本の風景」が見事にとどめられていると言えるでしょう。
岡本太郎は昭和32年から十年間に亘って高度成長期の日本を旅し、彼が追い求めていた「日本の伝統」の延長線上にある、日本を代表する「記憶の場所」を訪ね歩きました。その際に撮影した写真に文章を添え、「日本再発見」という題名で出版しました。「映像の考古学」上映会の第一シリーズを成す一連のフィルムは、映像における「日本再発見」にほかならない記録映画です。
主催:東京大学総合研究博物館+一般社団法人記録映画保存センター
協力:東京大学大学院情報学環吉見研究室
企画構成:東京大学総合研究博物館インターメディアテク寄附研究部門
【「映像の考古学」シリーズについて】
映画黎明期以来、教育映画からニュース番組まで、膨大な記録映像が生み出されてきました。いまやそれが瞬時に複製され、加工され、共有されるのが当たり前のことになりました。しかし、この膨大な資料体を成す映像は、保存および公開において、平等に扱われているとは言えません。その中で、誰もが一度は目にしたことのあるような歴史的な映像はごくわずかであり、大半の記録映画は忘れられています。多くのフィルムは注文制作された映画であるため、その時の役割をいったん果たした上で、消耗品のように放置もしくは廃棄されてきたからです。
20世紀における人間の活動を映像に残した記録映画を発掘・収集・保存・デジタル化し、公開することによって、消失の危機に瀕する膨大な「映像遺産」を保存する。それと同時に、今まで見慣れている映像と異なる記録映画を通して、20世紀日本の変貌を再評価する。過去のものを活かし、将来に向けて新しい解釈を生み出す上で、この記録映画上映の取り組みの意義は少なくないでしょう。
インターメディアテクでは、標本から什器まで広範囲に亘り、これまで見捨てられたものも含めた学術遺産を保存し、再評価することによって新しいリソースを生み出しています。映像においても同様に、20世紀日本における映像記録の宝庫というべき資料体の考古学的発掘によって、新たな発見や感動を生むことを期待する次第です。
本事業は、一般社団法人記録映画保存センターの協力のもとで、定期的に行われます。